食事から向上させる高齢者のQOL

QOLという言葉を知っていますか?Quality of Lifeというフレーズの略なのですが、主に介護・医療業界で使われる言葉です。「生活の質」と直訳されることが多く、私たちが生きていくなかで感じている生活への満足度や充実度などを指します。「大切なのは、たんに生きることではなく、よく生きることだ」という哲学者ソクラテスの言葉がありますが、まさにQOLの真髄を表す名言です。

ヒトが「よく生きる」ために必要な要素の1つとして「食事」が挙げられます。ヒトは食べ物を体内に取り込み、分解・消化することで生命活動に必要なエネルギーや栄養素を摂取しています。また、「食べたいものを、食べたい分だけ、食べたいように」食べることで満足感・幸福感を得ることができます。ただし、これは自分で食事をコントロールできるという意味です。暴飲暴食を意味しているわけではありません。

しかし、高齢者の体力・身体機能は加齢に伴って低下していきます。生活の中での運動量も自然と減るため、食欲自体も低下します。また、「食べる」という行為に関わる咀嚼・嚥下・消化機能などの機能も低下していきます。つまり、高齢者にとって食事は「苦痛の時間」となり得る可能性もあるのです。そうならないためにも、高齢者の体力・身体機能の変化を理解した上で、食事をサポートすることが重要になります。食欲が湧かない場合は日中に運動を取り入れたり、本人の好物を用意したりなどの対策が考えられます。また、飲み物にトロミをつけたり調理方法を工夫することで、本人の摂食・嚥下能力が維持できます。「できること」を維持し、それを取り上げない介助方法を見出せるかどうかが、QOL向上のカギとなります。